2.1.1. 原理 (続き)

MOSFET

トランジスタとは、第3の電極によってトランジスタに流れる電流を制御することができる半導体素子です。 トランジスタの導電部分を構成する半導体は性質によって以下の2種類に分類されます。

ごく少量の不純物の混入によって、価電子が欠乏状態の半導体です。

例えばSiやGeなど4価の電子を持つ原子の結晶中にごく少量のAlなどの3価の電子を持つ原子が混入すると、 3価の原子と4価の原子の結合部分は、価電子が1個不足して正孔と呼ばれる価電子の欠乏状態になります。 電圧によって-側から一旦は自由電子が正孔へ供給されるものの、またすぐ離れてより+側の正孔に 自由電子が移っていきます。このように自由電子が正孔に移りながら+側に向かって移動することで 電気が流れます。電流を流す担い手(キャリア)は正孔です。
ごく少量の不純物の混入によって、電子が余剰状態の半導体です。

例えば4価の原子結晶中にごく少量のAsなどの5価の電子が混入すると、 5価の原子との結合部分は価電子が余剰状態になり自由電子が発生します。 電圧によって、+側で自由電子は奪われ、-側でまた自由電子が供給されます。 よって、自由電子が移動するのでキャリアは自由電子となります。

FETは別名ユニポーラトランジスタと呼ばれ、電流通路の導電率をGate(G)と呼ばれる第3の電極によって 静電的に変化させて電流を制御することが目的の半導体増幅素子です。 Source(S)とDrain(D)と呼ばれる各電極間(チャネル)に流れるキャリアの量をGate電圧によって制御します。 p型半導体でチャネルを形成している場合は pチャネルFET、n型半導体でチャネルを形成している場合はnチャネルFETと呼ばれます。 MOSFETはGate電圧が0の時はSource-Drain間のキャリアの流量は減少しますが、Gate電圧を昇圧すると キャリアの流量が増大します。

現在MOSFETにはCMOS(Complementary MOSFETの略)と呼ばれる、 PチャネルMOSFET(PMOS)とNチャンネルMOSFET(NMOS)を 相補的に接続したFETを用いるのが一般的です。 CMOSの特徴として、消費電力が小さい、論理レベルが大きい、そしてノイズマージンが大きい、 といった特徴がありますが、反面2種類のMOSを組み合わせたために寄生サーミスタがあり、 規定以上の大電流が流れるとラッチアップと呼ばれる現象が発生し、 導電熱によってCMOSが破壊されてしまう弱点があります。 現在は入力部分に保護回路が組み込まれているため以前よりも大電流に強くなりしましたが やはり取り扱いには注意が必要です。


記録

記録には、対象となる記憶セルの選択信号線に電圧をかけてMOSFETのGate電圧を昇圧すると、 キャパシタの電荷を制御することができます。
記録情報が1である場合、データ線に電流を流してキャパシタを充電します。
記録情報が0の場合はデータ線には電流を流さないとキャパシタは放電して電荷は0となります。 一旦充電したキャパシタの電荷は徐々に放電され、 一定時間が経つと判定可能な電荷量未満となって再生不能になります。 そのため定期的にリフレッシュが必要です。


再生

再生には、対象となる記憶セルの選択信号線に電圧をかけてMOSFETのGate電圧を昇圧すると、 もしキャパシタに電荷が充電されていれば放電され、データ線に電流が流れます。 この電流を検知することで情報の値を確認することができます。
ただし、一度記憶セルの情報を再生するとキャパシタの電荷が0となって情報が破壊されるので、 再生後に情報のリフレッシュが必要です。 さらに、キャパシタに充電される電荷量が小さいので、 実際はセンスアンプと呼ばれる増幅回路も必要になります。

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