4.5. 障害の危険性
高速な規格の登場によって、制御プロセッサの集積化および高速化や、他の構成部品
の設計・製造には高度な技術が必要な上にノイズや過電流、静電気の放電、経年劣化などの耐性が
低くなります。
ノイズには以下のような原因によって発生する場合があります。
- クロストーク
信号線の電気信号が、隣接した信号線に移る現象です。
送受信信号の高速化によって、回路間または配線間の距離が極度に近すぎたため、
隣接した信号線や回路に電荷が移り、ひどい場合はビット値が変化してしまいます。
- 反射
信号線の電気信号が信号線の終端で反射する現象です。
プリント回路の終端が適切なインピーダンスでない場合に電気信号が反射して、
操作中の制御プロセッサの電気信号に悪影響を及ぼし、ひどいの場合は値が反転してしまいます。
高速化によって、制御プロセッサおよび基盤の反射ノイズの対策がより重要になってきています。
- スキュー
信号線どうしの配線長が異なるために電気信号の到着時間が不均一となる現象です。
複数のデータ線に電気信号が同期して流れる場合は、高速化および高密度化によって、
スキューによるデータの遅延による悪影響がかなり深刻になってきました。
また障害の性質としては、設計不良や製造工程上の不良などが原因の先天的な障害と
経年劣化や動作環境が原因の後天的な障害、そして他のネットワーク機器の障害による 通信障害の3種類が考えられます。
4.5.1. 先天的障害
- Ehternetカード
高速度規格の登場によって、設計や製造工程には非常に高度な技術が求められるようになりましたが、
Ethernetは比較的単純なデータ送受信システムであるため、先天的障害を持つ機器の大半は
品質検査工程で検出されます。しかし、購入直後の障害の確認はしたほうが得策です。
- ケーブル
最近はあまり見られせんでしたが、コネクタとの高速ネットワーク技術の登場により
コネクタとの接続不良や内部配線が断裂している恐れもあります。
特にネットワーク機器に付属した製品や価格が安い低品質の製品の購入時には注意が必要です。
4.5.2. 後天的障害
長期間の使用で起こる経年劣化と動作環境/取扱環境による急速な製品劣化など様々な要因がありますが、
具体的には以下のような例があります。
- 熱による長期的な化学変化で各部品や配線、配線接合部やケーブルの特性劣化によりノイズ発生
- 帯電した人体/物体と接触時の放電によってや各部品の配線断
- 雷などのサージ電流によって各部品や基盤配線断またはケーブル配線断
- Ethernetカードの挿抜による接続端子の磨耗によりPCI/PCI Expressスロットと接触不良
- 酸化などの化学変化で各部品や配線、配線接合部やケーブル内配線が腐食し、接触不良
- 振動による各部品接合部の半田剥がれで内部配線不良または配線断
- 衝撃によって各部品の配線断、およびケーブル配線断
- 炎天下や排気不良などの高温環境下での熱によって各部品やケーブルの特性劣化
- ユーザの実装ミスで基盤やケーブルが破損し、内部配線断またはコネクタ損傷
- ユーザのEthernetカードやケーブル選定ミスで動作遅延
など
これらの要因により、機器は動作不良または動作不能状態に陥ります。
4.5.3. 他の通信機器による通信障害
ネットワーク通信は他のコンピュータ機器とのデータ通信であるため、
他の通信機器の障害によって起こる通信障害も考えられます。
以下に他機器によるEthernet通信障害の例を挙げます。
- ケーブルの配線ミス
ケーブルはユーザ自身がケーブルとケーブルコネクタを用意すれば任意の長さのケーブルを
作成することができますが、ケーブル配線とコネクタが完全に接合していることを確認する必要があります。
- ケーブルのカテゴリ選択ミス
ケーブルのカテゴリのカテゴリを誤ると電気特性不良により送信エラーが多発し、Ethernetカードの動作遅延
- ケーブルの配線仕様選定ミス
ケーブルの内部配線仕様(クロス/ストレート)を誤り通信不能
- 同一のブロードキャストセグメントに多くの機器が存在
各機器が送信権を主張しあった結果、ジャム信号がブロードキャストセグメント上に多発し通信遅延
- ハブまたはルータの故障
ハブまたはルータの全体故障または接続ポート故障により、送受信不能
- 同一ブロードキャストセグメントに大量のデータ送信を行う機器の存在
他のコンピュータが通信帯域の大半を占有し通信遅延
- ハブまたはルータのネットワーク設定ミス
接続ポートを不使用に設定していたため、送受信不能
- ハブの通信ポート接続ミス
機器をカスケード接続ポートに接続したため、送受信不能
など
他にも様々なネットワーク環境の障害なども多数原因はありますが、
PC-Doctorではハードウェア障害診断ソフトウェアであるため、
EthernetおよびIPレベルの障害にのみ診断を行います。
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